添加物フリーの貴女
いつものように、匿名性の高いオンラインの海を漂って、
いま気になる誰かさんのSNSを遡りながら、
言葉ってなんて便利で、面倒なんだろうって思う。
表情とか、空気とか、そういうのってものすごく読みやすい。
いま相手がハッピーなのか、悲しいのか、怒ってるのか。
たとえ言葉に騙されそうになったとしても、
そのトーン、声色、間のとり方で本心が見えたりする。
だけど、テクストメッセージは完全に難しくて。
特に僕をはるかに凌駕するsympathyのスキルを持つ人たちは。
可愛らしい絵文字やスタンプに惑わされる。
本心が見えにくくなる。
さらに、最近さらに厄介なのは写真。
色とりどりのフィルターを使って、
着色料も防腐剤もたっぷりの不健康な写真が並ぶタイムライン。
そこには表情も空気もなかったりするから、さ。
ダメダメな僕は、そこで考え始めてしまう。
絵文字やらスタンプやらの意味を考えたり、
フィルターの向こうの素顔を見抜こうとしたり、
立ち止まって、必死に。本質を見抜こうとしてしまう。
けれど、最近、思うようになったんだ。
そのテクストに騙されてみるのもまた一興なのかも、って。
掌で躍らせようと、彼女が思っているのであれば、
踊って差し上げようではないですか、ってね。
着色料も防腐剤もたっぷりの不健康な写真も、
たまにはそのまま口の中に入れてしまっていいのかも、ってね。
依然としてそれは簡単ではないのだけれど。