愛してる、

 

僕の友人には、すごく強い人がいます。

すごく頭が良くて、体も強くて、

いつも喧嘩をふっかけたり、ふっかけられたりして、

それで、勝って、すごいなあって、思います。

 

僕は弱い人間なので、ふっかけられても、

割とすぐに折れたり、謝ったりして、

「張り合いがないなあ」なんて言われたりもするけど、

でも、なんだか、僕はよくわからないんです。

そして気づいてしまったんです。

彼ら彼女らは強いけど、それと同時に脆いことに。

強いけど、脆くて儚いから、

いつも自分が強いことを確認する手立てが欲しいことに。

 

僕は、弱いけど、しなやかな人間かもしれません。

確固たる、と言っては強すぎるかもしれないけど、

厳然たる自己を持ち合わせているつもりで、

それを幾度となく確かめる必要を感じていないので。

 

けれど、その事実に気づいてしまった瞬間、

僕は今まで彼ら彼女らを尊敬していたつもりで、

実はすごくすごく見下していたのではないかと、

そう思ってしまったのです。

 

僕がでしゃばらないのは、折れるのは、穏やかなのは、

弱さゆえの優しさでも、謙虚さでもなんでもなくて、

ただ周りのことを見下しているからなのかもしれない、

って、そう思ってしまったのです。

 

だとしたら、本当に厄介なのは、僕なのかもしれない。

常に強さを誇示するマウンティング軍団なんかより、

僕の方がよっぽどたちが悪い人間なのかもしれない。

そんな風に考えたりします。

 

けれど、僕、彼らを愛してる、って思います。

脆い彼らを抱きしめて、愛を伝えたい。

たとえ、その源泉が憐みだったとしても。

これが愛ではなく、愛に似た何か別のものだったとしても。