Don't have to be

 

定期的に湧いて出てくる、ありのまま教の人たち。

「そのままの自分が一番いい」

「飾らないありのままの自分でいたい」

大いに結構。あなたはそのままでありのままで美しい。

 

けれど、それを周りの人に押し付けるのは美しくないよ。

 

世界は本当に美しい。

一瞬一瞬ため息が出るほどに沢山の色があって。

愛や慈しみは至るところに充満している。

何も変える必要なんてない。変わる必要なんてない。

 

だけど、それを美しいと思えない人だって大勢いる。

自分と異質なものを傷つけて、排除しようとして、

暴力的な感情を無差別に振りかざして、

しかもその全てが無意識的だったりする。

 

怖くて、痛くて、自分を責めて、

ありのままを美しいと思えなくなってしまった人もいる。

だから、誰かの真似をしたり、らしくないことをしたり、

そうやって何とか今日を生きている人だって沢山いる。

 

なんて美しいんだろう。

自分を偽ってでも必死に今を生きようとする人、

誰かを傷つけないために嘘をつき続けている人、

美しくて、愛おしくて、僕は胸がいっぱいになる。

 

…なぜそんな人たちに、

「ありのままの自分でいた方が美しい」なんて言えるのか。

それって、無意識のうちに誰かの「ありのまま」を排斥することと、

一体何が違うというのか。

 

早く目を覚ましてほしい。

自分らしく生きることだけが、美しいわけじゃないってことに、

早く気付いてほしい。

醜いモンスターになってしまう前に。

 

自分らしくいるのが辛いなら、らしくなくたっていいじゃないか。

少し厚いインソールを靴に入れて、着慣れない服に袖を通し、

憂鬱な水曜日の夕方の街へ飛び出してみればいい。

部屋の隅にうずくまっていてもいい。

 

誰かが傷つけにやってくるかもしれない。

ありのままの姿で外に出ておいでよと。

そうしたければそうすればいいし、したくないならしなくていい。

何をしたってあなたは美しいのだから。

 

美しくない人なんてこの世界にただのひとりもいないよ。

ただ、それを美しいと思えない醜い心があるだけ。

世界中に蔓延る「ありのまま教」の厄介な宗教勧誘のように、

その人の美を見いだせない醜い思想があるだけ。