変身

 

少年時代、割と誰もが変身願望を持っていたのではないかと思う。

 

僕は基本的には仮面ライダーだの戦隊ヒーローだのの類が好きな少年ではなく、

同世代の友人たちがなぜ熱狂的に日曜にわざわざ早起きしてまで

そういった類のテレビ放送を視聴しているのか理解できなかった。

 

ヒーローショウは非常にわかりやすい勧善懲悪の世界だけれど、

本当に悪者だと思われている人が悪者なのだろうか、

という疑問が、幼いながら確かに胸の奥にあったのを覚えている。

 

話がそれましたごめんなさい。

 

そんな僕でも、唯一ヒーローショウで好きな部分があって、

それは他でもなく、主人公が変身するシーンである。

 

普段はさえない主人公が魔法の変身ベルトを身にまとった刹那、

見違えるような美しく逞しい、別人のようになる映像。

僕は胸をときめかせながらその瞬間を凝視していた。

 

僕は変身ベルトが欲しかった。

ベルトじゃなくてもいい、もっと抽象的なものでもいい。

とにかく一瞬にして違う誰かに変身させてくれる何かを探していた。

 

そして、大切なのは、その魔法が解けてしまうこと。

ウルトラマンが3分間で元に戻ってしまうように、

シンデレラが12時をすぎると醜い姿に戻ってしまうように。

 

解けてしまうから、魔法は魔法なんだよって、

幼い頃誰かが教えてくれたんだ。

 

 

大人になって、僕は日々変身しては元に戻っているのかもしれない。

みんなは僕の正体を知っているのだろうか。

それとも知らないのだろうか。

 

どっちでもいいな、と思う。

ありのままの自分も、変身した自分も、

どっちも自分だということに変わりはないのだから。